本研究では,Computer-assisted semen analysis(CASA)を用いて人工授精の妊娠の成否に関連する原精液の運動パラメータを評価するため検討を行った.2021年1月から2022年5月までに当院で実施した人工授精1,685周期を対象とした.患者背景を均等化するために傾向スコアマッチングを用い,原精液CASA所見を分析した.妊娠群と非妊娠群をMann‒Whitney U testを用いて評価した.群間で有意差があった運動率,平均速度,直線速度を Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線により閾値を定めた.妊娠群 (115周期) は非妊娠群 (115周期) と比較して,運動率(52.6 % vs. 45.1 %, P = 0.011),平均速度(28.3 μm/s vs. 27.3 μm/s, P = 0.038),直線速度(16.3 μm/s vs. 14.8 μm/s, P = 0.012)において有意に高い値を示した.ROC曲線によって運動率 48.8%,平均速度 30.2 μm/s,直線速度 14.4 μm/s が最適な閾値であると示された.CASAを用いて原精液運動パラメータを評価し,運動率,平均速度,及び直線速度が妊娠と有意に関連した.運動率のみでなく,原精液の平均速度と直線速度がステップアップ判断の一助となることが示唆される.