[緒言]生殖補助医療が腸管子宮内膜症に与える影響は明確ではなく,当該疾患を有する難治性不妊患者における卵巣刺激の継続の是非は不明である.卵巣刺激中に腸管子宮内膜症が進行し,重篤な転機をきたした症例を報告する.[症例]42歳0妊0産.rFSH/hMG投与による卵巣刺激を6回実施し,6細胞期胚Veeck分類 Grade3,5細胞期胚 Grade3を得た.その後,胚移植を行うも妊娠は成立せず,他院で再度hMG投与による卵巣刺激が施行された.転院時には便の狭小化を認めていたが,申告されていなかった.6回目の採卵時にS状結腸狭窄・穿孔をきたし開腹術を施行した.術後,本人の意思で不妊治療を断念した.[考察]卵巣刺激下に出現する消化器症状を見逃さず腸管子宮内膜症の早期診断に努めることが肝要である.症状のない軽微な病変であっても,卵巣刺激下では重篤な消化器系合併症を発症する可能性がある.卵巣刺激の継続が可能か,経時的に評価する必要がある.