ARTや人工授精を実施する上で精液の処理は必須な工程である.一般的には密度勾配遠心法や遠心を用いた洗浄,Swim up法が多く用いられるが,最近では遠心処理による物理的なダメージによって生じる精子DNAの断片化が懸念されている.そこで,ZyMōtⓇやMIGLISⓇをはじめとしていくつかの遠心処理を行わない精子処理デバイスが開発されている.当院でもこれら遠心処理を行わない精子処理デバイス導入に向けて検討を行ってきた.まず,MIGLISⓇとZyMōtⓇの2種類のデバイスを同一症例の精液を用いて処理し,Sperm motility analysis system (SMAS)にて所見を解析した.その後,解析結果が良好であったZyMōtⓇと現行法である密度勾配遠心法で同一症例の精液を処理し,ICSI後の受精率および発生率を比較した.本稿では非遠心型精子処理デバイスについて検討した結果,ZyMōtⓇを臨床導入できると判断するに至った経緯を紹介すると共に,将来の展望について考察した.