精液中の細菌混入は精漿成分の変性をさせ,細菌の内毒素により精子運動性が低下する.また,加温等の環境にて精子先体が損傷し受精能力が虚弱化することから,精子の前処理と処理中の温度管理に着目した.ヒト精液中には細菌性内毒素が高濃度に含まれる症例がある.密度勾配遠心法を用いて精漿を分離すると,細菌性内毒素の経時的上昇を認めず,精子DNA断片化率も有意に低くなることから,精液中の負の影響を抑制し精子の正常性を保つ有効な手段である.また,精子処理から媒精まで血清添加培養液での37℃の加温は,精子が自発的な先体反応を起こして先体が損傷し,受精能力を虚弱化させる可能性がある.治療に用いる精子は密度勾配遠心法後,室温にて保存し,媒精直前に血清添加培養液で加温してswim-up法を行うことが望ましい.培養室での精子処理は,運動精子回収のみではなく,精子の正常性を可能か限り保つことに留意する必要があると考える.