近年CRISPR/Cas9をはじめとするゲノム編集技術の発展により,数多くの遺伝子改変ラットが作製され,活用されている.こうした遺伝子改変ラットを遺伝資源として効率的に保存するためには,初期胚の状態で,液体窒素中で半永久的に保存する超低温保存法が有効である.本研究では,さらなるラット初期胚における超低温保存後の発生能の向上を目的として,エチレングリコール(EG)およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いたガラス化液(E15D15)あるいは,EGと新規凍害保護物質であるCOOH-PLL添加保存液(E20P10)を用い,異なる発生ステージにおけるラット初期胚を最小容量ガラス化法により保存し,加温後の生存率と胚発生率を評価した.さらに,胚移植を行うことで個体への発生率についても調べた.その結果,COOH-PLL添加保存液で保存したラット初期胚は,E15P15保存液を用いて保存した胚よりも高い発生能を示した.本研究の結果は,ラットバイオリソースなどにおいて有用であると考えられる.