胚の凍結はミトコンドリアに損傷を与える.レスベラトロール(Res)処理はミトコンドリア合成を促す働きがある.本研究では,ガラス化前のRes処理が胚のミトコンドリア動態および胚発生に及ぼす影響について検討した.ウシ卵巣卵子を定法により受精させ,受精後24時間から1日間Res(0.5 μM)処理したところ,SIRT1の発現量は増加したが発生および胚のミトコンドリア数には差が観察されなかった.次に受精後2日目の胚をガラス化すると,胚の発生率および胚盤胞期胚のミトコンドリア数が減少したが,ガラス化前のRes処理はこれを有意に回復した.また,胚の培地中にミトコンドリアゲノム由来の細胞外DNAが有意に多く放出されていることを確認した.Res前処理はガラス化融解後1日目の胚中dsDNA量やTOMM20量を有意に減少させた.以上から,ガラス化前のRes処理はミトコンドリア動態を変化させ,発生率を改善し,ミトコンドリア数の多い胚盤胞期胚を得るのに有効であることが示された.