
卵細胞質内精子注入法(ICSI)は,重度の男性不妊や受精障害を抱えるカップルにおいて有力な治療法として広く普及している.しかしICSIにおいても1~5%の症例で受精障害が発生することがあり,その主な原因の1つとして卵活性化不全が挙げられる.この問題に対処するため,A23187などのカルシウムイオノフォアを用いた人為的卵活性化処理(AOA)が広く用いられているが,一部の症例では効果が不十分な場合がある.A23187によるAOAでは受精率の改善がみられなかった2例に対して,A23187とpuromycinを組み合わせたAOAを実施し,受精率の改善とその後の胚移植により生児を獲得することができた.本報告より,従来の方法で効果が得られなかった症例に対してA23187とpuromycinによるAOAが有効な治療選択肢となる可能性が示唆された.