
生殖補助医療の進歩により凍結技術や治療法が開発され,現在は凍結胚移植(FET)が主流となりつつある一方,新鮮胚移植(fresh ET)の実施が減少傾向にある.特に国内のFET実施割合は89.2%と国際的な平均より非常に高く,日本の不妊治療の特徴となっている.本稿では,日本と海外のART成績や患者年齢層の違いを踏まえ,各移植法の利点・課題を比較検討し,臨床医の立場からどのように日本の少子化に貢献できるかを考察した.FETは柔軟な治療計画が可能だが,母児のリスクが指摘される.一方,fresh ETは卵巣刺激に伴う卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が懸念されるが,FETよりも短期間での妊娠の可能性がある.今一度胚の移植個数やグレードを考慮し,fresh ETの有効性や実用性について再評価することで,患者の状態に応じた治療選択の必要があると考えられる.