哺乳類の受精時において精子が卵内に侵入すると,カルシウムイオンの反復的な上昇(カルシウムオシレーション)が起こる.このカルシウムオシレーションは,ヒトやマウスを含む哺乳類の受精時においてのみ認められる現象であることから,卵活性化やその後の胚発生において重要であると考えられている.現在では精子内に存在するホスホリパーゼC(PLC)であるPLCゼータ(PLCζ)が卵活性化因子として機能することで,カルシウムオシレーションおよび卵活性化を制御していることが明らかになりつつあるが,一方でPlcz1遺伝子欠損雄マウスは雄性不妊とならない等,不明な点も多い.本総説では,PLCζのカルシウムオシレーションおよび卵活性化における役割についてPLCζ以外の卵活性化因子やメカニズムが存在する可能性やヒト生殖医療への応用について考察したい.