日本卵子学会では,生殖補助医療(ART)の核心を担う胚培養士の知識と技術の向上を目的とし,2002年度より生殖補助医療胚培養士,2007年度より上級資格として生殖補助医療管理胚培養士の資格認定を実施している.本稿では2022年度までに行った資格審査結果をまとめ,過去の報告との比較から胚培養士の現状を考察する.胚培養士は,受験者総数2,620名に対し,2,058名が認定され,平均合格率は78.5%であった.管理胚培養士は,受験者総数39名に対し,34名が認定され,平均合格率は87.2%であった.2022年度審査終了時点の有資格者は,胚培養士1,478名(概数),管理胚培養士31名,合わせて1,509名であった.新規認定者の性別は女性が80.5%,20–29歳が72.3%を占めていた.また最終学歴は,4年制大学卒以上の割合が76.6%を占め,前報との比較から,増加傾向にあった.最終学歴の専門分野は,医療技術教育機関以外の理系学部出身者51.2%(農学部39.9%,理学部8.1%,工学部2.6%,栄養学部0.6%)と,医療技術養成機関の出身者41.8%(臨床検査技師などの医療技術職の有資格者)に概ね二分され,前報との比較から,農学系,理工学系の出身者の比率がやや増加傾向にあった.新規認定者の申請時点の臨床実務経験年数は1~4年目が78%を占め,前報から大きな変化はなく,勤務施設は産婦人科医院・クリニックが74.7%を占め,前報より増加していた.5年ごとの資格更新における平均更新率は75.9%,認定者全体の資格更新率は62.7%であった.管理胚培養士は,年当たり約2.1名のペースで認定されており,胚培養士・管理胚培養士総数の1.6%であった.2022年度からの人工授精等の「一般不妊治療」,体外受精・顕微授精等の「ART」の保険適用への移行により,医療界および学術・教育界が連携し,優れた胚培養士を育成し,良質なARTを国民に提供することへの責務はさらに大きくなっている.本学会が認定する胚培養士の現状を踏まえ,より適切な胚培養士資格制度を継続的に実施し,本邦のART技術の向上に努める必要がある.