哺乳動物の卵子と胚の細胞膜の水と耐凍剤に対する透過性は,細胞内氷晶形成による傷害,耐凍剤の毒性による傷害,浸透圧的膨張/収縮による傷害などの主要な凍結傷害と密接に関係しており,高濃度の耐凍剤を含む保存液を用いるガラス化法では特に重要である.マウスでは,耐凍性が比較的低い卵子や初期卵割胚では,主に単純拡散によって水と耐凍剤がゆっくりと透過し,耐凍性が高い桑実期以降の胚では,主にアクアポリンを介した促進拡散によって速やかに透過している.このような水と耐凍剤の主要な透過経路の転換は哺乳動物全般にみられたが,種による違いも存在する.近年,我々はマウスの卵子/胚に有効な新しいガラス化法を開発した.この方法は,低濃度の耐凍剤を含む保存液を用いながらも卵子/胚への十分な耐凍剤の浸透と細胞の脱水/濃縮が可能で,細胞内氷晶が形成しにくい緩慢凍結法の長所と,簡単に短時間で保存できるというガラス化凍結法の長所を併せ持つ.