卵子の成熟は第一極体の有無によって判断されるが,形態的異常によって成熟判定が妨げられる場合が存在する.当院で採卵を行った症例のなかに,透明帯の外側に突起状の形態が複数存在し,囲卵腔が極端に少ないという共通の特徴をもつ6例の経験があり,多くの卵子で極体の存在が確認できずに未成熟卵子として判断され,媒精の対象にならずにいた.そこで我々は,この6症例の卵子紡錘体と染色体を染色した結果,未成熟と判断されたなかには,MII期まで成熟している卵子が存在していることが明らかになった.この結果をもとに,紡錘体可視化装置による成熟判定を行い,得られたMII期卵子に媒精を行った結果,2前核をもつ受精卵が得られ,胚移植の結果,2症例で児を得ることに成功した.卵子の形態的異常により,成熟判定が難しい症例については判定の方法を変えることで,より多くの成熟卵子が獲得できると考えられる.